お話しいただいた方
積水ハウス株式会社
ESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部
鷹栖 直輝様(写真左)
槻並 省吾様(写真右)
積水ハウス株式会社
積水ハウス株式会社は、LGBTQへの理解促進と誰もが働きやすい環境づくりを進めており、Allyサークルの運営、レインボーパレードへの参加などさまざまな取組を行っています。企業のLGBTQ施策を評価する「PRIDE指標」では住宅業界で初めて、4年連続でレインボー認定を獲得。本記事では、具体的な施策や今後の展望について詳しく伺いました。
積水ハウス株式会社は、1960年に創業した総合住宅メーカーです。累積建築戸数は270万戸を超え、世界一の実績を誇っています(2026年1月31日現在)。
当社の企業理念は「人間愛」を根幹とし、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンのもと、住む人一人ひとりの多様なライフスタイルと価値観を尊重した住まいづくりに取り組んでいます。
この「多様性の尊重」という考え方は、社員が安心して働ける職場環境にも深く結びついています。32,186名(連結:2026年1月末現在)の社員が活躍する当社では、女性活躍の推進や仕事と育児・介護・治療との両立支援の向上など、ダイバーシティ推進を積極的に進めています。
2020年には「人が最も重要な経営資源」という考えのもと「人権方針」を策定しました。LGBTQを含むあらゆる属性の社員・顧客を尊重して、誰もが自分らしく暮らし、働ける社会の実現を目指しています。
きっかけは、「社内」と「事業」の2つの視点から説明できます。
社内では、2014年にLGBTQをテーマにした研修を実施したところから開始しました。2020年に策定した「人権方針」をベースに、性的指向・性自認を理由とする差別のない、安心して働ける職場づくりの実現を目指しています。これは社外にも発信しています。
一方、事業の面では、住宅を必要とする人々の多様化に対応する必要がありました。近年、単独世帯や未婚の方、同性カップルなど、多様な家族形態が増えていることを実感するようになっています。しかし、従来の住宅ローン審査や各種契約書の多くは「夫婦」であることを前提に設計されているケースも多く、同性カップルの方々が利用しづらい状況にありました。
こうした中、「すべての人に幸せな住まいを提供する」という当社の使命を果たすため、この課題に向き合うことを決断しました。
従業員とお客様の双方に寄り添い、多様性が尊重される社会の実現に貢献したい。そんな思いが、当社のLGBTQ施策の出発点となっています。
福利厚生制度では、同性パートナーを持つ従業員が、法律婚の夫婦と同等の制度を利用できる「異性事実婚・同性パートナー人事登録制度」を開始しました。
また、LGBTQ当事者だけでなく、その支援者(Ally)を含めたネットワークとして「S-Allyサークル」を運営しており、約280名が登録しています。参加者同士の情報交換や、Allyであることを示すステッカーの配布を通じて、互いに尊重し、支え合える職場風土の形成を進めています。
さらに、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)や性別役割意識をテーマとした研修も定期的に実施しています。住宅営業の現場を題材に、例えば「キッチンが広いと奥様が喜ぶ」「男の子だから青色の部屋」といった何気ない表現に潜む固定観念を見直し、お客様一人ひとりに寄り添った接客の実現を目指しています。
お客様向けの取組としては、アンケートで性別情報が不要な場合は性別欄そのものを削除しました。必要な場合でも「男性・女性」の二択に限定せず、多様な選択肢を設けるようにしています。
そのほかにも、全国各地のレインボーパレードへ協賛を行っており、社員も積極的に参加しています。2026年のTokyo Prideでは、グループ社員やその家族・友人を含む約150名が参加しました。
従業員から「なぜ住宅メーカーがLGBTQに取り組む必要があるのか」と疑問の声が上がることもありました。しかし、経営トップ自らがLGBTQ施策の意義を全社員に向けて発信し、「誰もが自分らしくその能力を最大限に発揮でき、人も組織もさらに成長する。これが、積水ハウスのダイバーシティ&インクルージョンである」という視点をわかりやすく伝えることで、社内の理解は着実に広がっています。
また、異性事実婚・同性パートナー人事登録制度などの運用においては、本人の意図しないアウティングを防ぐため、細やかな配慮を徹底しています。制度利用には会社への申請が必要となりますが、パートナー情報は通常の人事データベースとは分けて管理し、情報の開示範囲についても本人と十分に確認したうえで手続を進めています。
家族手当の支給に伴い、上司や総務担当者へ情報が共有される可能性がある場合には、事前に本人へ説明し、了承を得たうえで対応しています。制度の運用にあたっては、本人の意図しないアウティングを防ぐため、情報の取扱いや共有範囲を本人と丁寧に説明・確認し、プライバシーに十分配慮しています。
社内外から多くの肯定的な反応が寄せられています。同性カップルのお客様からは、「どう見られているか不安だったが、積水ハウスでは当たり前のように対応してもらえた」という感謝の声をいただきました。住宅購入は人生の一大イベントであり、「この会社なら安心して相談できる」と感じていただけることは、当社への信頼にもつながると考えています。
レインボーパレードなどのイベントでは、「積水ハウスはこうした取組に積極的な企業」という認識を持っていただく機会も増えています。
採用活動においても「LGBTQフレンドリーな企業を選びたい」という意識が高まっており、「多様性を尊重する職場環境」を評価して入社を決めた学生が増えていると感じます。
LGBTQに関する取組を社会に根付かせるためには、企業単独ではなく、自治体やNPO、他企業などと連携しながら、社会全体で進めていくことが重要です。特別な活動としてではなく、多様な価値観を当たり前に受け入れられる社会の実現を目指し、同性婚の法制化を求める活動への賛同を通じて、制度面からの後押しもしたいと考えています。
LGBTQに限らず、職場にはさまざまなマイノリティの方々が存在します。それぞれの立場や背景への理解と配慮を深めることは重要ですが、その根底には「一人ひとりが違う存在である」という認識が必要です。多様性を受け入れ、お互いの違いを尊重しながら協力することで、新たな価値やアイデアが生まれます。企業としても、多様な人財が活躍できる環境を整え、共に新しい価値を創造していくことが今後ますます求められるのではないかと考えます。
会社の理念に沿いながら社内外で幅広く活動されている姿勢が印象に残りました。特に「お客様に世界一幸せなわが家を提供する」という思いを大切にし、多様なユーザー一人ひとりの価値観やニーズに寄り添いながら取り組まれている点に深く共感しました。また、レインボーパレードへの参加など社会に対して積極的にアクションを起こされている点に感銘を受けました。
東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております