TOP 事例紹介 誰もが安心して働ける職場づくり
により、社員一人ひとりが個性や
能力を最大限に発揮

誰もが安心して働ける職場づくり
により、社員一人ひとりが個性や
能力を最大限に発揮

お話しいただいた方

執行役 Corporate EVP 兼
パブリックビジネスユニット長
雨宮 邦和 様(写真右)

ピープル&カルチャー部門 人材組織開発統括部
インクルージョン&ダイバーシティグループ
HRプロフェッショナル 
岸 高夫 様(写真左)

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製造業

日本電気株式会社

日本電気株式会社(以下NEC)は、イノベーションの源泉である「ダイバーシティの加速」を、人・カルチャーの変革を推進する柱の1つに掲げ、LGBTQに関する取り組みを積極的に推進しています。今回は、LGBTQ当事者を含む全社員が安心して働ける環境づくりについて伺いました。

会社の事業を継続するためにも、様々な価値観や多様性を取り入れることが必須に

――  会社の概要について教えてください。

雨宮

NECの事業領域は大きく ITサービス と 社会インフラ の2つに分かれています。ITサービスの事業領域 では、エンタープライズ(企業)、パブリックセクター、官公庁、自治体などに向けてITサービスを提供しています。特に、AI、IoT、5Gなどの最新技術を活用し、世界中の多岐に渡る業種のお客さまに幅広く価値を提供しています。社会インフラの事業領域では、「海底から宇宙まで」を網羅する事業を展開しており、海底ケーブルや宇宙防衛に加え、NECのルーツであるテレコムキャリア系の事業も含まれています。これらを統合して、社会インフラとして位置づけています。

NECでは、HR方針「挑戦する人の、NEC。」のもと、社員一人ひとりに挑戦と成長の機会を提供し、フェアな評価を行うことで、社員がベストを尽くせる環境と風土改革を推進しています。2024年4月からは、全社員を対象にジョブ型人材マネジメントを導入 し、「適時適所適材」と「キャリア自律」を実現するための仕組みを整えています。
また、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D) においては、「一人ひとりの違いを強みに変え、変化にしなやかに対応し、強く勝ち続ける組織づくりとカルチャーの変革」を目指しています。国籍、年齢、宗教、性別、性的指向・性自認、障がいの有無に関わらず、すべての社員が持てる力を最大限発揮できる職場環境を整えています。なお、NECでは、インクルージョンが発揮されて初めてダイバーシティに価値があると考え、インクルージョンをダイバーシティの前に置いています。
NECはグローバル事業も展開しているため、多様な価値観を積極的に取り入れ、それを事業成長に活かしています。一人ひとりの個性や意向を尊重する文化を築くことが、企業の成長において最も重要であると考え、取り組みを進めています。

インタビュー画像1

――  LGBTフレンドリーについて取り組むきっかけとなったことは何ですか?

雨宮

世の中における多様性尊重・LGBTQの権利保護の動向と、NECの経営戦略における人・カルチャー改革の推進が、LGBTフレンドリーへの取り組みを始めるきっかけとなりました。

近年、世の中の変化は激しく、最新の情報や技術も数年後には大きく変化している可能性があります。NEC自身も、過去にパソコンや半導体事業の縮小・撤退を経験しており、様々な多様性や価値観を取り入れることで、世の中の変化に適応し続けていかなければ事業の継続は難しいと強く認識しています。経営状況が最も厳しかったリーマンショック後の2012年から、NECはカルチャー変革に向けた取り組みを始め、2010年代後半から本格的に推進してきました。しかし、取り組みを進める中で、事業ごとの横の連携や役員同士の協力が不十分であることが判明。これらを一体化し、相手を受け入れ、相手の考えを理解することの重要性に気づきました。

この「相手を理解する力」は、世界中のお客様や多様な状況を把握する能力にもつながり、そこから新たな事業の可能性を見出すきっかけにもなっています。こうした経緯もあり、NECは現在、LGBTフレンドリーな取り組みを積極的に推進しています。

アライを組織化し、「顔の見える相談窓口」を設置

――  LGBTフレンドリーについて具体的にどのような取り組みをしていますか?

雨宮

NECでは、LGBTQ当事者が自分らしく安心して働ける職場づくりを推進しています。LGBTQの支援者であるアライを組織化し、有志がチャットグループに登録して積極的に活動しています。

アライの活動は、2019年に「LGBTQ Ally 顔の見える相談窓口」を設置したことから始まりました。この窓口では、LGBTQ当事者からの問い合わせや相談に直接対応しています。2022年には、NECグループ社員有志による「LGBTQ Allyの仲間を増やす会」(NECグループ内のERG(Employee Resource Group)のひとつ)が発足。2023年6月には私がNECグループのLGBTQ Allyコミュニティエグゼクティブスポンサーに就任しました。

イベントの開催にも力を入れており、LGBTQに関する勉強会や映画上映会、食堂でのコラボランチメニューの考案など、50名以上の社員有志が活動しています。活動費用はNECインクルージョン&ダイバーシティグループが提供しています。これらのイベントを通じて、LGBTQに関する情報共有やつながりを目的としたチャットグループ「NECグループ Ally コミュニティ」への加入者が増え、現在は約50名に達しています。

実際に当事者に寄り添うというのは、このアライの人たちだと思っていて、ここのメンバーをもう少し力を入れて増やしていきたいと考えています。また、相談窓口の設置やエグゼクティブスポンサーの就任は、社内における理解促進に大きな意義があったと感じています。

雨宮

社内イベントは年に数回開催しています。「LGBTQ Allyの仲間を増やす会」がNECグループの別会社とコラボし、オリジナルのランチメニューとしてオムライスを提供しました。一見ただのオムライスですが、食べてみると中から美味しい食材が出てきます。「人の中身は十人十色、セクシュアリティも十人十色、外見からだけでは何も分からない」をオムライスで表現しました。このコラボランチは即完売するほどの反響がありました。下に敷くトレイマットにもLGBTQの理解促進への工夫を凝らしています。

また、毎年6月のPRIDE月間(日本やアメリカなど世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動・イベントが実施される月(Pride Month))には、会社主催の「レインボーランチ」を開催。社員がLGBTQについて考えるきっかけを提供しています。昨年の6月には、ランチを楽しみながらLGBTQクイズ大会を開催したグループが現れるなど、社員同士の交流にも役立っています。

※写真(上:ランチメニュー表、下:トレイマット)は日本電気株式会社様にご提供いただきました。

※写真(上:ランチメニュー表、下:トレイマット)は日本電気株式会社様にご提供いただきました。

これまでPRIDE月間にはLGBTQをテーマとする「Dive into I&Dセミナー」を開催していました。LGBTQ当事者の方を講演者として招き、体験や考えを共有してもらいました。昨年は当事者でタレントの方をゲストに迎え、本社の食堂や他拠点のパブリックビューイング、ウェビナーを通じて、多くの社員が参加しました。録画配信により、後日視聴することも可能としました。

雨宮

最近では、トランスジェンダーについて理解を深めることを目的として、トランスジェンダー当事者とその周囲の人々の葛藤を描いた映画の上映会を開催しました。
上映会後のトークショーでは、監督や出演者の方から、映画制作の想いや体験を語っていただきました。実施後のアンケートでは、参加者の評価が非常に高く、LGBTQへの理解が促進されたのではないかと思います。

――  取り組みを実現するうえで、困難なことはありましたか?また、それをどのように克服しましたか?

雨宮

「LGBTQ Allyの仲間を増やす会」は、本来の業務外での活動となるため、活動時間の確保が難しく、業務に支障が出ないよう働き方を工夫しています。

また、社内イベント開催、例えば毎年内容を変更する「レインボーランチ」の企画・実行では、イベントの趣旨に賛同し、企画力のあるメンバーを募る必要があります。そこで、社内の他のERGに声掛けしたり、他部門の業務を体験できる「ジョブシャドープログラム」を活用してメンバーを募集するなど、工夫を重ねています。

――  取り組みの結果、社員(または顧客)の反応はいかがでしたか?

採用時に性別を記入しないなどの配慮を行っていますが、当事者の方が安心してカミングアウトができる程の環境が整っているとはいえません。そのため、カミングアウトしたいと思う当事者がカミングアウトしても大丈夫そうだと思える程の環境づくりや、心理的安全性を確保するために、当事者に寄り添えるアライの組織化を進めています。また、社内外のイベントを通じてLGBTQに対する理解を深めるさまざまな取り組みを行っています。例えば、アジア最大級のLGBTQ+関連イベント「東京レインボープライド2024」には約180人のNECグループ社員が参加するなど、イベントに関わる社員も増えて少しずつ関心が高まっていることを実感しています。

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LGBTQ当事者含め、社員全員が安心して働ける環境づくりを

――  LGBTフレンドリーについて今後の課題や展望があれば教えてください。

NECでは、同性のパートナー関係や事実婚を法的な婚姻と同等に扱うなど、社内制度の整備を進めてきましたが、今後は職場文化そのものをより開かれたものにすることが課題です。特に、当事者の社員が安心して働くことができる環境を整え、心理的安全性を高めることが必要だと考えています。現状では、異性の事実婚からの申請はあるものの、同性のパートナーからの申請はまだありません。これは、カミングアウトに対する不安も原因の一つとして考えられるため、アライの活動をさらに推進し、LGBTQに対する理解を深める研修やイベントを継続して実施することで、社内の意識を高めていきたいと思っています。また、カミングアウトは強制するものではありませんが、しやすい雰囲気をつくることで、社員が余計な気遣いやストレスを感じずに、本来のパフォーマンスを発揮できると考えています。そのため、アライのメンバーが意見交換できる場を設け、当事者の声を経営陣へフィードバックする仕組みを強化する予定です。NECは今後も、人権方針やI&D方針、行動規範に基づき、全社員が安心して働ける職場づくりを進めていきます。

インタビューを終えて

NECのLGBTフレンドリーな取り組みは、単なる制度整備に留まらず、社員一人ひとりが多様な価値観を尊重し、互いに支え合い、挑戦できるカルチャーの醸成を目指されており、LGBTQ当事者が安心して働ける環境をつくるだけでなく、多様な人材の可能性を引き出すための土壌が築かれていると感じました。I&Dの実現が、ビジネスの成長につながる、という考えは、他の企業にとって大いに参考になるでしょう。

東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
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