お話しいただいた方
医薬開発 クリニカル・リサーチ統括部 統括部長
河合 統介 様(写真右)
スペシャルティケア部門
消化器領域医療推進チーム 東日本エリア
平井 友之 様(写真左)
医薬開発 バイオメトリクス・データマネジメント統括部
クリニカルデータサイエンス第一グループ
金塚 久里子 様(写真中央)
ファイザー株式会社(日本法人)
LGBTQ+への取り組みを通じて、社員一人ひとりが自分らしく働ける環境づくりを進めるファイザー株式会社。同社は、多様性(ダイバーシティ)、公平性(エクイティ)、包括性(インクルージョン)を重視し、行動指針「Equity(公平)」を軸に様々な活動を展開しています。社員有志による「OPEN in Japan」や社内啓発プログラムなど、実際にどのような取り組みが行われ、どのような成果や課題があるのか、そして、職場全体にどのような変化をもたらしているのかについてお話を伺いました。
ファイザーは、「患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす~Breakthroughs that change patients’ lives~」を企業目的として掲げ、世界をリードする研究開発型の製薬企業です。内科系疾患、炎症性・免疫疾患、がん、感染症、ワクチンなど、幅広い疾患領域で事業を展開しています。
LGBTQ+に関しては、社員の行動指針として掲げる「Courage(勇気)」「Excellence(卓越)」「Equity(公平)」「Joy(喜び)」の4つのValues & Behaviorsのうち、「Equity(公平)」を体現する取り組みを推進しています。具体的には、社内でダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)への理解を深める機会を積極的に設け、一人ひとりがやりがいを持ち、誰もが輝ける会社、そして社会の実現を目指しています。
社員の自主性を非常に大切にする企業であり、すべての社員が多様性を尊重しながら自分らしく働ける環境づくりを重視しています。
社員がありのままの自分を活かすことでパフォーマンスを発揮し、ファイザーで働くことを誇りに思える、そんなインクルーシブな職場づくりをしていこうという上層部のコミットメントを経て、LGBTQ+の権利と認知度向上を目指して2019年6月に有志社員によるColleague Resource Group(以下: CRG)「OPEN in Japan」を立ち上げ、以降様々な活動を行っています。行動指針がグローバル全体で一貫しており、社員にしっかり浸透しているため、社員自ら手を上げて活動に参加をしています。誰もが安心して自分らしく働ける素晴らしい環境づくりに大変積極的です。
OPEN in Japanのミッションは、「LGBTQ+を含む多様な価値観を積極的に取り入れ、誰もが安心して自分らしく輝ける環境を実現する」ことです。これまで、役員向け研修や全社員向けのLGBTQ+・SOGI研修、社外有識者によるトークセッションを開催し、同性パートナーにも配偶者に準じた扱いが適用されるよう人事制度を見直すなど、多様な取り組みを進めてきました。
各部門から集まった有志によるCRGは、「レインボーパレード」「プライド月間」「コミュニケーション」「トレーニング」の4つのチームに分かれ、毎年設定するテーマに基づき、楽しみながら活動しています。これまで全国各地で開催されるレインボーパレードへの参加、プライド月間のトークセッション、東京都との連携イベント、本社ファミリーデーなど、様々なイベントを実施してきました。
特に「コミュニケーション」チームは、社内のソーシャルネットワークやホームページを通じて、LGBTQ+に関連する活動や情報を発信しています。例えば、研修やトレーニングの案内に加え、レインボーパレードの様子を紹介し、参加を促す取り組みを行っています。
レインボーパレードはやはり盛り上がりますね。多くの社員がボランティアで参加してくれますし、虹色のタオルなども作ってアライであることを可視化するようにしています。このような活動により、仲間同士の輪がさらに広がり、LGBTQ+に関する理解が深まる好循環が生まれています。
現在では「レインボー・アライ・ジャパン」のメンバーが900名を超え、社内での理解が着実に広がっていることを実感しています。まだまだ活動を継続していきたいです。
また、社員が東京都のアライバッジをつけて病院を訪問することがあります。このバッジの着用を通じて、私たちがLGBTQ+を含む多様な価値観を理解し、支持するアライであることを示し、訪問先の方々に安心感をお届けできればいいなと思っています。
開始当時はCRGの有志メンバーの人数などリソースも少なかったため、アライ活動が一過性で終わってしまったり、継続的な啓発、LGBTQ+への理解促進が不十分で、なかなか浸透しませんでした。CRGメンバーで4つのチームを編成し、各チームで年間の活動目標と内容を決め、継続的に活動を続けていくことで新たなメンバーも増え、様々なアイデアが生まれ、年間を通じてのイベント・啓発活動が実施できるようになりました。一つひとつの企画やアイデアなども自主的ですし、年月を重ねるごとに内容が充実してきています。
2019年からスタートしたこれらの活動も、徐々に進化してきました。LGBTQ+への理解促進を少しずつ図っていくことからスタートして、2021年は「知る」、2022年は「自分事として捉える」といった段階を踏んだテーマを決めて、これまで継続的に活動しています。明確なテーマを掲げることは、全員が活動の意図や目標を共有しやすいため、とても大事なことだと考えています。
これまで多様性に関する教育を受ける機会が少なかった世代の社員は、自身の考えや行動をアップデートする必要性を感じ、責任感を持って研修に取り組んでいます。こうした姿勢が世代間のギャップを埋める努力へとつながり、組織全体で多様性への理解が深まりつつあります。その結果、職場内ではより良い循環が生まれていると感じています。
一方で、新たに入社する若い世代の社員は、学生時代から多様性を理解する教育を受けてきたこともあり、こうした取り組みに対して高い意識を持っています。そのため、会社の活動にも自然と馴染み、自らの使命感を持って積極的に参加している姿が見受けられます。
2024年には、GLOBAL OPEN タウンホールミーティングにて、OPEN in Japanの活動が、世界50以上の応募の中から「Chapter of the YEAR」のカテゴリでWinnerを受賞し、私たちの活動がグローバルで評価を受けることができました。引き続き頑張っていきたいです。
LGBTQ+への理解者は増えてきていますが、行動に移してくれる人をもっと増やしていきたいと考えています。LGBTQ+の活動をどのように継続し、その作られた輪をどうやって広げていくか、模索しているところです。究極的には、様々な方がいる社会の中で多様性に対してどのように向き合っていくのかについて、ディスカッションを通じて考え、すべての社員がその課題に取り組めるような環境づくりを目指しています。
特に今の若い世代の方たちは多様性に対して非常に感度が高く、また私たちが接する患者さんの中にも意識をされている方々が多くいらっしゃいます。そのため、私たち自身も社会に寄り添い、理解を深める努力が必要です。社外との連携やコラボレーションを通じて、より広いサポート体制を築いていきたいと考えています。
誰もが知る製薬業界の最先端を行く大企業でありながら、インタビューに答えてくださった3名は非常にフレンドリーで、気さくにありのままをさらけ出してくれました。そんな率直な姿勢と情熱は、LGBTQ+コミュニティへの深い理解と支援の証だと思えてなりません。ファイザーのLGBTQ+への取り組みは、業界全体でのLGBTQ+に対する理解と支援を推し進め、インクルーシブな社会の実現に寄与することでしょう。
東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております