お話しいただいた方
執行役員 経営企画本部 グリーン戦略室 室長
DE&I委員会 委員長 東北大学特任教授(客員)
東海林 園子 様(写真中央)
HR本部 副本部長 DE&I委員会 副委員長
北 週作 様(写真左)
イノベーティブプロダクト事業部/営業推進セクション/
フィールドセールスチーム兼務/
らでいっしゅぼーや通販事業本部付
DE&I委員会LGBTQ+部会
浦 京太 様(写真右)
オイシックス・ラ・大地株式会社
「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の国内主要ブランドを通じ、安心・安全に配慮した農産物、ミールキットなどの定期宅配サービスを提供しているオイシックス・ラ・大地株式会社。ナチュラルボーンサステナブルカンパニーとして、創業から数々の持続可能な事業を実施している。LGBTQ+コミュニティに対し、どのように支援を行っているかなど具体的な取り組みをお聞きしました。
主なサービスは「食品宅配業」です。「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の国内主要ブランドを通じて、安心・安全に配慮した農産物、ミールキットなどの定期宅配サービスを提供することが主要事業となります。サブスクリプション型でお客様に商品を毎週届けるB to Cのサービスや、最近では学校給食などのB to B事業も展開しています。
当社は2000年の創業時からオープンな風土で、性別のみならず、人種・国籍・年齢など様々な人がオープンに混じり合っている企業です。物流倉庫などで働く社員も含めると、22カ国もの国籍を有する多様な人材が活躍しています(2024年3月末時点)。国籍は比較的可視化されやすいと思いますが、LGBTQ+については目に見えない課題があると感じていました。会社としてみんなが働きがいを持って活躍する組織にしていくためには、色々な理解が必要だと思い、2023年にDE&I委員会を設立しました。DE&I委員会は、多様な価値観を尊重しあうことで、個々の持つ力を発揮し、イノベーションが起きる環境づくりを目指しており、LGBTQ+フレンドリーに関しても、それ単体で取り組むというよりは、DE&I委員会の目指す世界を実現する1つの取り組みと考えています。
DE&I委員会は、「LGBTQ+部会」「障がい者部会」の2つの部会とともに活動を行っており、委員会とLGBTQ+部会が中心となって取り組みを実施しています。LGBTQ+への理解を深め、誰もが働きがいをもてる職場づくりを実現することを目的に活動しています。これまで専門家の方を招いて、多様性が広がる社会においてのコミュニケーションを学ぶ研修を実施しました。研修の参加者は社員約800人中99.7%と高い参加率で、私自身もかなり驚いています。
社外活動としては、4月に開催された東京レインボープライドへの参加がありました。今何が必要かという部分を委員のメンバーが理解することで、まず第1歩を踏み出せたと考えています。
弊社ではサークル活動支援というものがあり、会社から活動費の補助をしてもらえるという制度があります。アライ活動をもっと社員に広げるにはどうしたらいいのだろうと考えた時に、このサークル活動支援制度にアライ活動を入れてみてはどうかと思い、「PRiSM!(LGBTQ+アライ)」を立ち上げました。誰でも参加できて楽しく入ることができる、啓発とはちょっと色合いを変えて楽しく活動しようというコンセプトでやっています。
DE&I委員会は、業務として業務時間内に活動をしているため、本業に影響が出ないような範囲で活動し、上長に承認をもらうなど色々な工程が必要になります。アライメンバーを増やすにも各部署の上長に承認を取らないといけないので、限界がありました。その点「PRiSM!」では、自分たちの勤務時間外での活動になるので、上長の承認はいらないし、活動資金が一部出る。サークル的な活動にすることで、同じ志をもった社員同士で運営可能となり、能動的なアクションが多数生まれています。
人事規程の適応範囲の拡大にも取り組んでいます。特別休暇や慶弔見舞金の適用範囲を拡大し、同性パートナー、もしくは多様なジェンダーの組み合わせ、夫婦別姓など、法的な婚姻手続きを選ばなくてもパートナーと生活する、またはしている方々にも適用されるようにしました。また、性別を変更された方がビジネスネームを変更できるようにし、緊急連絡先には同性パートナーも登録できるよう見直しました。
活動を進めていくと、コミュニケーションの取り方が分からない社員が一定数いるなど、委員会メンバー、社員によってLGBTQ+への理解の差があることが分かりました。そこで、まずは現状の理解度の把握をするため、社員に対してアンケートを実施しました。また、全社員が参加必須の研修を開催することで、実際にLGBTQ+の当事者の気持ちを知りどのようなコミュニケーションを行うことが良いのかを学ぶ機会を提供しました。その研修も一方的な聞くだけの研修ではなく、対話形式で、その会話をみんなに聞いてもらいながら理解を深めてもらうという試みをしました。
初めてのダイバーシティのLGBTQ+研修を受ける際の事前アンケートと事後アンケート結果では、かなりポジティブな変化が見られました。研修を受ける前は理解が低いなという部分があったものが、研修後にはかなりクリアになっているように感じられました。LGBTQ+に限らず、普段自分が行っているコミュニケーションが知らないうちに相手を傷つけている、また傷つける可能性があるということが全員の気づきになり、明日からの行動や発言を変えようとする社員が多かったように見受けられました。
あと弊社では、社員に対して誕生日の方やお子様が生まれた方、結婚された方を発表する活動があるのですが、これまで「〜くん」「〜ちゃん」としていたところを、「〜さん」に統一してくれた社員がいました。また、色々な家族の形がある中で、弊社が提供するサービスにも活かしていけるような気づきを得る社員もいました。
コミュニケーションについて一度自分の固定概念を壊して解体し組み立て直してみるととても面白く理解が進むため、それが学びになっているのではと思います。「PRiSM!」でも、当事者にとってはどうなんだろう?とか割とストレートにこれはアウトかもなどの対話が生まれています。抑制したりせずに、対話の中で自分事にしていけることが一番大事なのではないかと思います。
DE&I委員会が中心となって、オイシックス・ラ・大地の社内取り組みにとどまらず、当社のサービスを使うお客さまにも輪を広げていきたいとの思いで、「みんなにうれしいプロジェクト」を開始しました。例えば、どんな形の家族、カップルでも、ハレの日の食事が自宅での素敵な時間になるよう「Oisix」のミールキットならお手伝い出来るのではないか、手が不自由な方には難易度の高い食パンのクリップは本当に必要かなど、誰かの不自由を解決することが、実はみんなの嬉しいに繋がる、そのような取り組みを行っていきます。このミールキットも様々な部署のメンバーが関わりながら商品を開発したので、みんなが 仕事を通じてLGBTQ+に触れ、社員全員の意識が高まり、自分の商品を誇らしく子供や家族に伝えられるのも非常に良い傾向だと思います。この活動を積極的に社内・社外へ発信していきたいです。
「PRiSM!」については、テーマ決めで少し悩むこともありますが、互いにアイデアを出し合いながら進めています。この活動が実を結び、LGBTQ+への理解がさらに高まることで、未来のオイシックス・ラ・大地で働く社員にとって多様性が尊重され、差別のない環境が築けることを目指していきます。
DE&Iへの本格的な活動開始からわずか1年で、数々の取り組みを通じて確かな基盤を築き、さらに新たな挑戦にも意欲的であることが伝わるインタビューでした。日々の業務と並行しながらLGBTQ+の普及活動を楽しんで取り組まれており、こうした姿勢が、誰もが自分を存分に発揮できる環境と未来を創り上げると感じました。
東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております