お話しいただいた方
執行役 エクゼクティブオフィサー
チーフファイナンシャルオフィサー
チーフDE&I オフィサー
廣藤 綾子 様(写真中央)
エクゼクティブオフィサー
チーフピープルオフィサー
和田 真司 様(写真右)
DE&I戦略推進部長 日本対がん協会 理事
山本 真希 様(写真左)
株式会社資生堂
美と健康を第一線で追求し続ける株式会社 資生堂。その商品・サービスは日本だけでなく世界中で愛されています。また多様性と包摂性を重視した企業文化でも知られており、LGBTQ+コミュニティに対し、どのように支援を行っているかなど具体的な取り組みをお聞きしました。
資生堂は、スキンケアやメイクアップ、フレグランスなどの「化粧品」を中心とした事業展開を行いながらも、その他に「レストラン事業」や「教育・保育事業」など幅広く展開しております。化粧品だけにとどまらず、世界中のお客様の生活に新しい価値を創造し、資生堂にしかできない「ビューティーイノベーション」で社会に貢献したいと考えています。
これまで資生堂では「女性の活躍」に焦点がいきがちだったのですが、LOVE THE DIFFERENCES(違いを愛そう)というスローガンのもと、多様な人材が働きやすく、個性や能力を存分に発揮できる環境づくりを進める中でダイバーシティの重要性を強く感じていました。「LGBTQ+」に関しても会社としてサポートしたいという思いから、2015年に「東京レインボープライド」へ参加したことが大きなきっかけになったと思っています。
LGBTQ+の理解促進を目的とした人事研修を徹底しています。当事者社員の体験談や外部有識者を招いたトークセッションなど、当事者を取り巻く現状について社員一人ひとりが考える機会となる社内イベントも実施しました。特に社内イベントでは、勇気を持って登壇した当事者社員が、「当事者の気持ちはなかなか聞きづらい」、「こういうふうに聞かれたらどう思うだろう」、「こういう時どのように対応すればいいのだろうか」などの参加社員の疑問に対して、フラットにオープンに話すことで、社員の理解が促進されていると感じています。イベント後は「こういう感じで対応したらいいのだな」という声が参加社員からも寄せられ、関心の高さが伺えました。また、人事制度の面では、社員の同性パートナーも異性の配偶者と同様の処遇を享受できるよう就業規則の改訂を実施し、特別休暇、介護制度、育児制度などの福利厚生の利用にあたり、配偶者に同性パートナーを含めています。
LGBTQ+、トランスジェンダーの方を対象としたメイク講座などもNPOや LGBTQ+支援団体の協力のもと日本各地で開催しています。メイクアップやスキンケアは、使用者のニーズが非常に多岐にわたります。「女性だからこうしなければならない」「男性がメイクをするのはおかしい」といった時代ではありません。性別を超えさまざまな提案が可能です。性的指向に関しても、店頭の美容職の社員に対して適切な教育を行い、お客様にどのように接客すればよいかトレーニングを実施していますので、気持ちよく店頭での接客を受けていただけると思います。
資生堂では、「属性に関わらず差別をしない」と資生堂グループで働く一人ひとりがとるべき行動を定めた「資生堂倫理行動基準」で明文化しています。ただ、それがあるなしに関わらず、資生堂では「特定の属性だから特別扱いする」という意識はそもそもありません。私は以前サンフランシスコに住んでおり、そこは特にダイバーシティ(多様性)が進んでいる地域でした。その後資生堂にジョインしましたが、違和感なく馴染めたのは、資生堂の中でLGBTQ+を含め、様々な属性の方が自分らしく活躍できているということが当たり前になっているからだと思います。
そして東京レインボープライドへの参加については、私は今回初めての参加でしたが、これほど熱気のある素晴らしいイベントだと思いませんでした。当社が出展したブースでは、自社のLGBTQ+への取り組みを紹介したパンフレットや自社製品のサンプルの配布を行いましたが、想定以上の行列ができ、大変でしたね。(笑)
イベントを通じて、横のつながりがまだまだ足りないと実感しましたので、LGBTQ+の理解をもっと深めたい他の企業様ともお話ししていきたいと思います。
福利厚生の面でハードルを感じることがあります。日本の法律で定められていることもあり、自社の福利厚生でカバーすることの限界を感じることがあります。海外から同性パートナーを日本に連れてきた際、配偶者ビザが取得できないため、健康保険も配偶者として扱われず独自で取得いただくなど、さまざまなハードルがあります。国の制度や文化上、難しいことは承知していますが、企業として努力を継続し、少しずつでも変化していければと考えています。もちろん、国の積極的な取り組みや行動にも期待しています。
社内イベントのプランニング時に、当事者社員へのリスクヘッジに非常に悩んだ覚えがあります。本人やご家族に対する誹謗中傷など予期せぬトラブルが発生するのではないか、といった不安がありました。登壇する本人がカミングアウトしていたとしても、イベント後の反応が心配でした。しかし、実際には何事もなく盛況であったため、実施してよかったと感じました。実名で所属なども明かして参加する社員を尊重し、企画側も誠意をもって行動に移すことの大切さを学びました。
プライド月間に開催した4日間にわたる社内イベントには、延べ1,000名以上の社員が参加しました。参加後のアンケートでは95%の社員が職場でのLGBTQ+当事者の同僚を支援したい、90%以上の社員が具体的にアクションを起こせるようになったと回答し、多くの参加者がアライ宣言を行いました。
トランスジェンダーの方々にとって、店頭に足を運ぶのは勇気がいることが多いようです。そのため、メイク講座を開催し、心理的安全性を担保した環境を整えています。弊社の商品を使用してレクチャーを受けていただくのですが、最初は緊張した様子で来場される方も、帰る頃には表情が明るくなっています。ビューティーの力の強さを実感します。
目指すのは「この属性の人だから」と特別視・意識しなくなることです。例えば、グローバル化が進んでいる会社で「グローバル化」と言うのが恥ずかしいと感じるようなレベルに達したいですね。自然体でいられるカルチャーを築き、さまざまな方がいきいきと活躍できるよう、引き続き活動を続けていきたいと考えています。
LGBTQ+に限らず、今後意識せずとも、のびのびと働ける環境を整えていきたいと考えています。一企業としてだけでなく、さまざまな企業様と手を取り合い、日本社会を変えていきたいと思っています。
資生堂は多様な人々を受け入れ、誰もが自分らしさを発揮できる環境をすでに醸成しているのだと十二分に伝わってくるインタビューでした。様々な垣根を越え、世界水準の取り組みに日々チャレンジする資生堂の活動は、今後も多くの企業に影響を与え、多様性を尊重する社会が広がっていくと感じています。
東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております