TOP 事例紹介 性の多様性を理解し、
協働して支援する
学びの現場。

性の多様性を理解し、
協働して支援する
学びの現場。

お話しいただいた方

東京都立大学ダイバーシティ推進室特任研究員
藤山新 様(写真右)

東京都立大学管理部学長室庶務係
小野木南帆 様(写真左)

メインビジュアル
学校教育

東京都立大学

性別、障がいの有無、文化的相違に関わらず、多様な人々が集う「大学」という空間。東京都立大学では、「ダイバーシティ推進室」を中心に、性的マイノリティの啓発をはじめ、さまざまな“相違”を理解・尊重しあう環境づくりに取り組んでいます。学生・教職員一人ひとりの個性を活かしながら、多彩な研究を推進し、TMU2030の実現を目指しています。

多様な人々が集い、学ぶ、開かれたキャンパスへ

――  大学の特徴を教えてください。

藤山

東京都が設置する唯一の総合大学で、2020年4月に大学名が首都大学東京から東京都立大学に変更になりました。2011年に「ダイバーシティ推進宣言」を発出し、「ダイバーシティ推進基本方針」を策定しています。性別、障がいの有無、文化的相違などにかかわらず、多様な人々が大学のあらゆる活動に同様に参加し、等しく尊重される大学の実現を目指しています。

小野木

画像02 本学のダイバーシティ推進室は2011年9月に発足されました。副学長が室長を務め、特任研究員2名と学長室長で構成されていて、学生も障がい者支援スタッフとして参画しています。

画像02

――  性的マイノリティ支援に取り組まれたきっかけは?

藤山

本学が性的マイノリティ支援に早く取り組んだきっかけは、ダイバーシティ推進室を立ち上げる際のワーキンググループでの議論を通じて、「ダイバーシティ」の枠組みの中で取り扱うべき課題を広く検討し、性的マイノリティも当然含まれるべきだとの認識が共有されたことだと聞いています。
私自身はジェンダー論を志望して大学院に行き、そこでトランスジェンダーの状況をはじめて知り、どういうことかと調べ始めたことがきっかけで、性的マイノリティに関するテーマに取り組むようになりました。特にスポーツにおける性的マイノリティの問題について研究しています。

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「聞く」から始まる性的マイノリティ支援

――  具体的にどのような活動をしていますか?

小野木

画像04 セクシュアリティに悩み、困っている学生・教職員に対する「相談窓口対応」と、本学のすべての構成員を対象とした性的マイノリティの「理解促進活動」に取り組んでいます。「相談窓口」は、ダイバーシティ推進室内に設けていて、電話やホームページの問い合わせフォームから申し込めます。オンラインや対面で相談ができ、プライバシーに配慮した、じっくり話ができる相談用のブースも設置しています。
「理解促進活動」については、「講演会の開催」「教職員研修の実施」「大学説明会でのポスター展示」を年に数回実施し、プチ勉強会の「よるダイバー」を前期と後期の年2期、各期において週に1回、計8回程度、夜に開催しています。

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藤山

「よるダイバー」は特徴的な活動です。ダイバーシティに関心を持つ学生を主な対象に勉強会をしていて、その中で性的マイノリティについても触れています。最近では学生だけでなく教職員や学外の方も参加してくれ、関心を持つ層が広がっています。
教職員向けの研修では私が登壇をしています。参加した当事者の方からは、すごく安心した、心強いといった声をいただく一方で、伝え方のニュアンスが違うのではないかと貴重な意見をいただいたこともあり、まだ私自身の認識が至らないところがあるなと感じています。

画像05
小野木

職員からお手洗いをどのような表示で案内すればいいですかといった質問が来ることもあり、ダイバーシティや性的マイノリティについて考えてくれる職員が増えていると思います。本学では性的マイノリティに関する対応状況や基本的な情報をまとめたガイドラインを策定しています。性的マイノリティの課題は、一人ひとりの理解と協力があって解決に進んでいくものだと考えているので、教職員研修の中でしっかり理解を深めてもらいたいと思っています。

大学教職員の連携で、支援のさらなる充実を

――  どのように活動を広めましたか?課題はありましたか?

小野木

教職員研修ではハラスメントをテーマにしたものが多く、性的マイノリティはなかなか中心的に取り上げられなかった中で、2014年からダイバーシティ推進室が性的マイノリティの当事者や支援者を講師に招いた講演会を開催するようになりました。これがきっかけとなり性的マイノリティ支援活動が広まっていったと思います。

藤山

画像06 支援が広く知られるようになり、学内の当事者が、当推進室の相談窓口を利用するようになりました。教職員に直接相談するケースもあるようで、どう対応をすればいいのかと教職員から相談されることも増えています。
学生は、今まで自分のセクシュアリティについて他人に話したことがないので、状況を話すだけでも気持ちがラクになり、自分の中で整理がつくことが多いようです。聞き手の私たちが勝手に解釈して結論を急ぐようなことをせず、まず相手の話をしっかり聞く姿勢をとても大事にしています。
また、学内の体育館には更衣室が男女用しかなかったのですが、当事者からの相談を受けて施設の担当者と話しあい、更衣室を新設することはできないが、「誰でもトイレ」を更衣室として利用するという対応を行ったこともあります。設備がないからできないで終わらず、何かできないか、対策を考えることが大事だと思います。

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――  今後の活動など、お聞かせください。

小野木

学内により多くのアライを増やしていきたいと考えています。また、研修参加者にステッカーを配るなどしてアライの可視化につなげようとも考えています。

藤山

他にも大学教職員のネットワークを充実させたいと思っていて、UDA(大学ダイバーシティ・アライアンス)と呼ばれる、性的マイノリティ当事者の支援やSOGI/LGBT+に関する大学関係者のネットワークで、積極的に情報交換をしています。
他の大学の方と話していると、性的マイノリティに関する環境整備に対応したいが、具体的に何をすればいいのか分からない、マンパワーが不足していて手が回らない、予算に問題があるなどといったことをよく聞きます。それぞれの大学で置かれている状況や事情はあるかと思いますが、誰もが活躍できるよう、条件を整えることも大学の役割であり、今後、あらゆる大学で取組が進むことを願っています。

インタビューを終えて

性的マイノリティ当事者の悩みや不安な気持ちをなくすために、一人ひとりが性の多様性を正しく理解し、できることから支援を始めることが大切です。さまざまな価値観をもった人々が集い、学び合う、開かれたキャンパスを実現するため、東京都立大学は変わりゆく社会に対応し続けています。

東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております

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