TOP 事例紹介 「志」を受け継いで
100年超。
受け容れあう会社へ。

「志」を受け継いで
100年超。
受け容れあう会社へ。

お話しいただいた方

人事部 人事グループマネージャー 廣瀬哲章 様

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製造業

味の素株式会社

調味料などの食品事業や、アミノ酸の研究開発によって成長してきた味の素株式会社。働きやすい会社の調査では、常に高い評価を獲得しています。同社の「働きやすい環境づくり」は、「多様性を受け容れあうDE&Iの推進」を基盤に、性的マイノリティ当事者の支援にも向けられ、本社・グループ会社の各組織が一体となって取り組まれています。

人それぞれの働きやすさを追求

――  会社の特徴などについて教えてください。

廣瀬

画像02 当社は、1909年に創業以来、100年以上にわたり、「おいしく食べて健康づくり」という志を受け継ぎながら成長・発展してきました。2023年2月には『中期ASV経営2030ロードマップ』を公表し、グループの志(パーパス)として「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を掲げ、2030年の目指す姿として、10億人の健康寿命を延伸すること、環境負荷を50%削減することを目標に設定しました。
人事面の特徴を挙げますと、国内外の従業員は約3.5万人、当社単体では3,335名の大組織ながら退職率は約1.9%と、新入社員から長く働いている人の多い会社です。「働きやすさ」にこだわった経営をしており、例えば、2017年には所定労働時間が20分短縮され、7時間15分へと改定されました。これにより時間の使い方の幅が広がり、よりライフスタイルに合った働き方が選べるようになりました。当社は、高いレベルの職場環境を実現することで、個人のモチベーションを向上させ、新しい発想の商品開発や事業創出につなげたいと思っています。

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――  「LGBTフレンドリー」に取り組まれたきっかけは?

廣瀬

契機になったのは『東京2020オリンピック・パラリンピック』大会、日本選手団の栄養サポート『JOC G-Road Station』への参加です。大会理念である「多様性と調和」の考えに則り、自社内でも性的マイノリティ支援に取り組むこととしました。
2018年、味の素グループポリシーに「LGBTへの差別禁止」を定め、この年に経営者メンバーと人事部を対象とするアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)の研修を実施。このとき、性的マイノリティの状況や当事者への認識を深め、翌年には全従業員対象にオンライン研修を開催するなど理解と支援の輪を広げています。
性的マイノリティ当事者支援については、当社では多様な価値観を受け入れてノベーションを起こそうとする「ダイバーシティ推進」の基礎となる重要課題と認識しています。

社内浸透のカギを握るLGBT相談窓口担当者

――  具体的にどのような活動をしていますか?

廣瀬

まず「LGBT相談窓口の設置」ですが、当社人事部に統括的な相談窓口を設置する一方で、各組織にも窓口担当者を置き、顔写真や担当業務などを見える化したうえで、相談したい担当者を柔軟に選べる体制としました。
LGBT相談窓口担当者向けの教育・研修には力を入れていまして、年1回、外部相談窓口委託会社の研修を受講してもらい、性的マイノリティ当事者の講演や質疑応答、さらにはロールプレイングを通じて知識のアップデートを図っています。研修を重ねることで、将来的には社内インフルエンサーになるような人が出てくることを期待しています。
「車座対話会」は、外部相談窓口委託会社と当社人事部、各組織の相談窓口担当者が集まり、話し合う場で、年2回実施しています。悩みや本音を語り合うことで、相談窓口担当者と人事部との関係を強化しています。
他にもさまざまな活動を展開していますが、大きな組織だからこそ知識のバラツキが出たり、担当者一人で悩んでしまうこともあるので、何かあったらすぐに相談できる体制で、皆がつながっているという安心感を与えたいと思っています。

正解は分からない。だからこその対話

――  活動を通して社内にはどのような影響がありましたか?

廣瀬

全従業員が受講必須の「eラーニング」や任意参加の「ランチセミナー」を通じて、性的マイノリティについての理解を深める活動を行っています。参加者にアンケートを取ると、多くの好意的なコメントが寄せられています。
当社はあえてアライ宣言をしておらず、社内にアライが何人いるか把握していないのですが、これまでe-ラーニングを用いた研修は国内グループ会社全員必須受講のため、受講者は累計で約9,000名、性的指向・性自認に関するランチセミナー参加者は任意参加ですが累計で約400名になっています。
当社のキャラクターの『アジパンダ®』をあしらったレインボーステッカーを配布したり、東京および各地のレインボープライドイベントなどについて社内SNSを通じて案内発信を行うことで、社内外へのアライ活動の活発化に取組んでいます。

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――  当事者支援に対して課題はありますか?

廣瀬

画像04 福利厚生制度の見直し、相談窓口の構築、研修実施など、開始から5年間でさまざまな課題と向き合ってきました。性的マイノリティに限らず、それぞれ“背景”をもった方が毎日ストレスを感じることなく働くことができる職場環境かと言えば、まだその域まで達してないかもしれません。現状に満足することなく、今後も必要な取組を進めていこうと考えています。
それから、就職活動やインターンシップに参加の学生さんは味の素のDE&Iをよく研究して面接などに来られます。当社の役員や従業員が正しい知識で対応できるよう、社内研修をはじめ、さまざまな手段を通じて性的マイノリティやDE&Iへの認識を深くももってもらうことは、この先も続くだろうと思います。

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――  今後の活動などをお聞かせください。

廣瀬

当社は「相談窓口担当者の設置」を軸に性的マイノリティ当事者支援の活動を広めてきました。相談機会は増えていますが、担当者からは「マニュアルはないのか?」「一問一答式の回答集や事例集がほしい」といった声もよく寄せられています。正解が分からないことが不安だと思うのですが、人それぞれ価値観が違えば、悩みのポイントも違ってくるので、画一的な回答ではうまく対応できないというのが人事部としての基本姿勢です。例えば、当社工場に設置されている更衣室の利用ルールについて、性的マイノリティ当事者に対応するにはどうすればよいか。簡単にルールを変えられない事情もある中で解決を目指すには、皆が話し合って考える必要があります。こうした問題は今後も出てきます。表に出ないだけで、確かに職場には困っている人がいるのだという意識をもち、地道な活動を今後も続けたいと思っています。将来的には我々のような組織がなくなり、それでも困らない状態になることが理想です。

インタビューを終えて

「多様性を活かす組織には、まとめ役のマネージャーの存在が大事」とおっしゃる廣瀬様。LGBTフレンドリーを始め、多様な人財が活躍する職場だからこそ、経営の一本筋の通った意志を伝え、ゴールを示すことが重要になります。「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の実践は、組織を大きく前進させる力になります。

東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております

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