お話しいただいた方
ピープル&カルチャー ディレクター
大宮 桃子 様(写真左)
ブランドマーケティング マネージャー
石原 公司 様(写真右)
バートンジャパン合同会社
スノーボードブランドとして長年業界をリードしてきたBurtonは、多様な人々が自分らしく楽しめる環境づくりを大切にしています。本記事では、日本を拠点とするバートンジャパン合同会社がLGBTQ+の包括的な職場環境や社会への取り組みをどのように進めているのか、その理念や具体的な活動についてお聞きしました。
Burtonは1977年にアメリカ・バーモント州にて創業されたスノーボード用品やアウトドア用品を開発・製造・販売する会社です。創業以来、Burtonは革新的なプロダクトを開発し、スノーボードを遊びから世界的なスポーツへ成長させてきました。
スノーボードのリーディングカンパニーとして、アウトドア業界およびウインタースポーツ業界のサステナビリティを主導するBurtonは、世界で初めてBコーポレーション(B Corp)認証を受けました。現在、アメリカに本社を置き、オーストリア、日本、オーストラリア、カナダ、中国にオフィスを構えています。
本社の雰囲気はとても自由ですが、大自然の中で始まったファミリービジネスのカルチャーを踏襲し、当社もアットホームでカジュアルな雰囲気があると思います。
元々、本社や日本でも、性別や人種、年齢で人を差別するという風土はなく、会社としてLGBTQ+に特化した取り組みを行っていたわけではありません。
男性は働いて女性は家にいるのが当たり前だった時代がありますが、弊社はファミリービジネスから始まっていて、創業者のジェイク・バートン・カーペンターも妻のドナ・カーペンターと共にビジネスを拡大していきました。
しかし、創業の段階で、経営メンバーの女性が妻のドナだけということが問題だと気づき、男女平等に働くことができる職場環境づくりを積極的に進めてきたという歴史があります。
一方、昨今のいろいろな学びの中で、LGBTQ+の方はおよそ10人に1人の割合で存在し、マイノリティとして不当な扱いを受けたりして、日々の生活の中で苦しさや悩みを抱える方も少なくないという現状が近年クローズアップされるようになってきました。Burtonでもそうした問題へのアプローチが必要と考え、現在取り組みを進めています。
LGBTQ+の問題以前に、スノーボード界には、賞金の金額をはじめ、男女間の格差が根強く存在していました。ジェイクは、それに対して違和感を抱いたため、私たちが主催する大会では、参加人数・競技レベル・マーケットの注目度に関わらず、男女の賞金を平等に設定してきました。現在のLGBTフレンドリーの取り組みの根底には、性別に関係なく、すべての人が平等であるべきだという考えがあります。
Burtonが大事にする理念の一つに「WE RIDE TOGETHER」という言葉があります。スノーボードは元々、他者との勝ち負けを競うスポーツではなく、仲間と一緒に自然の中でライディングを楽しむものとして始まりました。友人がうまく滑れたら一緒に喜び、転んだら手を差し伸べる。お互いをサポートし、高め合うことができるスポーツとして、スノーボードはコミュニティを大事にしています。「WE RIDE TOGETHER」にはそのようなスノーボードのあるべき姿が現れています。
この理念のもと、Burtonは誰もが自分らしくいられる環境を作る責任があると考えています。LGBTQ+に限らず、性別・人種・国籍を問わず、多様性を尊重し、誰もが排除されることのない社会を目指しています。この姿勢は、社員に対しても、お客様に対しても同じです。ビジネス上関わるすべての方に対して同じ姿勢で取り組んでいます。
私たちは、多様性と包摂性があり、人々に活力を与える、そんなスノーボードの世界やコミュニティを創り出すことを目指しています。LGBTQ+に関していうと、日本では当事者の声はなかなか上がりにくいことを認識しているため、スタッフの教育の機会を設けることから始めました。「DE&Iとは何か」「私たちにとってなぜそれが大事なのか」といった根源的なことを学ぶとともに、LGBTQ+など具体的な課題について、外部の専門家を招いた知識と現状を知るトレーニングや社員によるワークショップ、ビデオなどを活用した学習会を実施しています。また、組織としてDE&Iを保障する仕組みや制度を確立してきました。数年前に、事実婚や同性パートナーを家族として認め、分け隔てのない福利厚生を適用するパートナーシップ制度を導入しました。
元々Burtonは、人の属性に関わらず、個性を尊重し、大切にする文化を持っているため、服装も自由です。あらゆるお客様が快適に使用できるジェンダーニュートラルな製品を多数取り扱っており、今後も開発を進めていきます。
これまでの取り組みに対しては、全体的に賛同する声が多いと感じていますが、LGBTQ+に関する知識や理解は、まだ社員の間で差があると感じています。当事者の方々が安心して自分の属性を表現できるだけの心理的安全性を確保するため、会社として取り組むことはまだ多くあると思っています。引き続き、組織として何ができるか探求していきたいです。
トレーニング後のアンケートを見ると、皆さんそれぞれ、良い意味で新鮮な反応があり、学びの中でたくさんの気づきを得られたようです。
社外では、人事同士の繋がりとして、同じ理念を抱える企業様とのお付き合いがあります。同じアウトドア業界で、共に理念を大切にし、社会に貢献していくことを重視しているので、人事として社員教育のあり方や、福利厚生の提供について、定期的にコミュニケーションをとって意見交換しています。
業界内でも社外向けの情報発信は多い方で、アメリカからの情報をそのまま流すわけではなく、日本の情報も集めて発信しています。
弊社はアスリートと業務契約を結んでいます。男女比については創業当初から変わりませんが、4、5年くらい前から、人種のバランスにも注目するようになりました。当社のホームページをご覧いただくとわかるように、かつては白人アスリートが圧倒的に多かったのですが、現在はさまざまな背景を持つアスリートと契約を結んでいます。アスリートの多様性を高めることで、彼らを起点とした多くの人々とつながり、LGBTQ+に限らず、より包括的なスポーツ文化を築くことができると考えています。
トップダウンで「これをやりなさい」と指示するのではなく、それぞれが自主的に動く環境を作ることが理想です。
また、社内のことはもちろんですが、その先にあるゴールは、スノーボーダーやスキーヤー、アウトドアに関わる人たちに対して、「Burtonは、フラットで差別のない、理解のある会社だ」ということが伝わることです。そして、スノーボード、スキー、アウトドアはすべての人が楽しめる、ということを広く知ってもらいたいです。
現在は「学ぶ」というステージにあるため、今後さらに学びを深めていきたいと考えています。 当面の目標は、社員によるアライグループを結成することです。強制ではなく、スタッフが多様性と公平性、包摂性(DE&I)の重要性や個々の課題を理解し、団結していくことを目指します。既にスタッフの中でアライになりたいメンバーは複数いるので、仲間の人数を増やしていくとともに、スタッフ一人ひとりが自信を持ってアライだと言えるよう、みんなで学びを深めていきたいと思います。次のゴールは、ストアを訪れる多様なお客様に対して、スタッフが自信を持って、属性に関係なく尊重することを体現し、すべての人を温かく迎え入れるチームを作ることです。最終的には、私たちのあらゆるステークホルダーに対して、個人の尊厳を守り、多様な個性を尊重することの重要性をさまざまな表現方法を通して伝え、コミュニティを盛り上げる組織へと進化させたいと考えています。
オフィス内に足を踏み入れると、スポーツやアウトドアの本質である“自由”を大切にし、誰もが自分らしく楽しめる文化が根付いていることを感じました。さまざまな取り組みが、ストアを訪れるお客様を温かく迎え入れるチームづくりへとつながり、さらにはアスリートをはじめとする多様なコミュニティへと広がっていくのだろうと感じます。「WE RIDE TOGETHER」の理念のもと、今後も挑戦を続けながら、より自由で多様性に満ちた未来を築いていくことでしょう。
東京都では性的マイノリティの方々が働きやすい職場の環境づくり等の取組
を支援するため、事業者の方へ向けた支援を御用意しております